栄養成分ブレンドコーヒーの手引き(^^)

第387話 患者の珈琲学(その51)老化した卵母細胞が若返る

シリーズ『くすりになったコーヒー』

 これはネズミの実験ですが、ニコチン酸を含んでいる深煎りコーヒーは誰が飲んでも安全な飲みものですから、赤ちゃんが欲しくてもなかなか実現しないカップルには朗報です。

●老年雌マウスの卵母細胞をニコチン(NA)を加えて培養すると若返る(詳しくは → こちら )。

 マウスはヒトと同じように、雌の年齢が増すと卵母細胞の質が低下します。老化という以外の理由は不明ですから、この実験の結果は驚きです。データの概略は次の4点です(図も参照)。なお、NADは哺乳類の全ての細胞でエネルギーを作るための重要な補酵素で、かつ長寿遺伝子を刺激して病気を予防し、寿命を延ばします。実験に使ったNAは細胞のなかでNADに変わるビタミンです。

1.卵母細胞のNAD合成酵素NMNAT2の活性が高まっていた(図は省略)。
2.卵母細胞のNAD濃度が向上していた(図上左)。
3.静止期の卵母細胞の染色像が若い細胞に似ていた(図下左)。
4.減数分裂期の紡錘体の形が若い細胞の物に似ていた(図上下右)。

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 卵母細胞はやがて卵細胞になり受精して子孫を残すことになります。しかし、卵母細胞が健康でいられるのは若いうちだけで、年をとると正常な機能を果たせないことがあるのです。結果として生まれてくる赤ちゃんに障害が出るリスクが高まります。どうしたら妊娠適齢期を過ぎた女性でも安心して赤ちゃんを産めるようになるか?現実には、出生前の遺伝子検査でリスクが高いと判断されると、「産もうかどうしようか」で悩む夫婦が大勢います。
高齢マウスの卵母細胞がニコチン酸で若返るという今回の実験は、ヒトにも当てはまる可能性があります。

●人が年をとるとNADが少なくなる(詳しくは → こちら)。

 正確に言いますと、この表現は間違いです。正しくは「年をとるとNADを作る酵素が減る」ということです。その証拠に、NAD血中濃度は70歳を過ぎてもほとんど変わらないというデータがあります(詳しくは → こちら )。下図左端の棒グラフをご覧ください。白棒は高齢者で青棒が若者のNAD血中濃度の分布です。この図で見る限り、高齢者の方が高濃度であるとも言えるのです。

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 では最近の論文やネット記事に「年をとるとNADが減る」と書いてあるのは何故でしょうか?論文をよく読んで解ったことは、NADが減るのではなくて、使い終わったNADをリサイクルする酵素NAMPTが減ってくるのです。ですから、この酵素を補うことでNADのリサイクル経路が活性化すると書いてあるのです。こういった論文内容は大型サプリメントの開発に繋がるので、何処かで商売根性がうごめいているようにも思えてしまいます。そんな状況下で、マウスの卵母細胞の実験を知った筆者は、もしNADが不足したなら『NAを使えば簡単に増やせる』と確信しました。

NADリサイクル経路が不活化しても、新たにNADを合成するデ・ノボ経路が動いていれば、NADが減ることはない。

 マウスの実験で使われたNAはデ・ノボ経路を活性化するビタミンなので、卵母細胞のNADが増えたものと考えられます。そしてこのとき増えた酵素は、リサイクル用のNAMPTではなく、デ・ノボ経路の酵素NMNAT2なのです。

 こうしてNAを使うことで老化した卵母細胞は若返りました。そこにはNADで活性化する長寿遺伝子も働いているのですが、ここでは説明を省きます。大事なことは、NADを増やす方法として、大企業や大研究所が挑んでいるリサイクル経路を使わなくても、NAという古くて安価な薬を使う道が確かにあるということです。

●コーヒーのニコチン酸の本当の価値が次第に明らかになる気配がある。

(第387話 完)

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第386話 患者の珈琲学(その50)ニコチン酸を多く含む食品

シリーズ『くすりになったコーヒー』

 深煎りコーヒー特有のビタミンとして、3回に分けてニコチン酸のお話をしました(第374、375、379話を参照)。深煎りコーヒーを飲めば、1日3杯で十分です。では浅煎りを飲んでいる人はどうでしょうか?残念ながら浅煎りコーヒーのニコチン酸含有量はほんの少ししかありません。

●同じビタミンB3のニコチン酸アミドは、より多くの食品に含まれているが、ニコチン酸の役割の一部しか代替できない。

 ですから、ビタミンB3はニコチン酸として摂った方が良いのですが、毎日摂るには若干の工夫が必要です。そこで、ニコチン酸を多く含む食品「トップ10」を表にしてみました。一目して解ることは、圧倒的に深煎りコーヒーとキノコなのです。例外的にピーナッツとトウガラシが混じっています。

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 筆者のコーヒー研究は「ニコチン酸をより多く含む焙煎法」で始まりました。15年前、コーヒーを全く知らなかった筆者は、まるでエチオピア・コーヒーのようなフライパンを使って焙煎して、焙煎温度と時間の関係を調べました。その結果解ったことは、簡単な数式1が成り立っていることでした。

 (式1) X=240−Y ただし、Yは180〜220℃であり、Xは時間(分)である。

ニコチン酸を増やすには、焙煎温度を高くして時間は短くするか、低い温度で時間をかけるかしかない。

 色々試した結果、1杯10グラムの豆に最大3.8ミリグラムのニコチン酸ができました。現在のところこれが文献上の最大値で、100グラムあたり38ミリグラムは、乾したマイタケに次ぐ高値です。

●ビタミンB3の1日必要量は男性で20ミリグラム、女性で15ミリグラム程度。

ですから深煎りコーヒーを飲んでキノコ料理を食べて、たまにピーナッツを頬張っていれば不足することはありません。ところが、経験したことがない長寿社会では、もしかすると大変なことが起こっているかも知れません。

●年をとるとミトコンドリア補酵素NADが不足する。

 ニコチン酸は体内でNADに変わります。つまり言い換えれば「年をとるとニコチン酸の1日必要量が増える」ということになるのです。しかしそれがどの程度であるのか詳しくは解りませんし、個人差も大変大きいと想像することはできますが、高齢者のニコチン酸NADについて、詳しい生理学はまだよく解っていないのです。

 今、日米の両国でNAD補給のためのサプリメントの開発が盛んです。候補は3つあって、ニコチン酸アミドリボシル、NMN、そしてニコチン酸です。3つのなかでNMNが先頭を走っているように見えますし、反面ニコチン酸は副作用のために忘れ去られているのです。

そこで重要なことは、

●食べ物から摂るニコチン酸に副作用はなく安全である。

 実際に、毒キノコは別ですが、食用キノコを食べ過ぎて顔面紅潮で痛んだり、高脂血症になったりすることはありません。深煎りコーヒー数杯飲んでも副作用は起こりません。つまり、ニコチン酸に掛けられた副作用の汚名は、空腹時の臨床試験で見られたものであって、食生活ではあり得ないことなのです。

●高齢者のNAD不足による老化の促進は、コーヒーを飲んでキノコを食べれば予防できる。

 筆者はどう考えてもそういう結論になるのです。

(第386話 完)

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第385話 患者の珈琲学(その49)カフェインが脂肪を燃やす

シリーズ『くすりになったコーヒー』

 「コーヒーはがダイエットに効果あり」とする俗説が多々あります。根拠は様々ですが、筆者が満足できる根拠はこれまでありませんでした。「コーヒーは食欲を抑える」という根拠はありますが、食欲を多少抑えることはあっても、体重減少までは行きません。

 「カフェインは興奮性なのでアドレナリンの分泌を促して脂肪を燃やす」との説も弱いものです。しかも薬理学的にはカフェインよりもクロロゲン酸の方に分があるように見えるのです。実際に(株)花王食品は、ヘルシア缶コーヒーにクロロゲン酸を添加して、「脂肪を燃やすトクホ商品」として製造・販売しています。しかし、この缶コーヒーにはレギュラーコーヒーにはない特殊な加工が施されています。

 そんな状況の中で去る6月24日発表のサイエンス・レポート誌に、「えっやっぱりそうだったの」とちょっと驚く論文が載っていました(詳しくは → こちら )。


●インスタントコーヒーを1杯飲むと、赤外線サーモグラフィーで褐色脂肪組織部位が赤色になる。

 百聞は一見に如かずですから、写真をご覧ください

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 論文には「コーヒーの、恐らくカフェインで褐色脂肪組織が活性化する」と書いてはありますが、俄かには信じがたい気もしないではありません。褐色脂肪細胞の活性化は、脂肪を熱に変えてダイエットに役立つという話に疑いの余地はないのですが、「この通り真っ赤になりますよ」と魅せられた写真には誰もが驚いてしまいます。

 この燃焼反応に関与しているのはミトコンドリアの1型脱共役タンパク質UCP1と解っています。しかし、その制御因子は今のところほとんど不明です。この論文では、カフェインが褐色脂肪組織の量と機能を高めることを、分子レベルで確認しているので、疑う余地はないのですが、たった65ミリグラムのカフェインを含むネスカフェを飲んで30分後の発熱と聞けば、そりゃあ誰もが驚いてしまいます。


●痩せられずに困っている肥満症の方は是非ともお試しください。

 論文が正しければ良い結果が期待できます。

(第385話 完)

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第384話 患者の珈琲学(その48)痛風とコーヒー関連遺伝子

シリーズ『くすりになったコーヒー』

 中世イギリスの医者で、オックスフォード大学長兼王室侍医のウイリアム・ハーベーは痛風の持病もちで、年中発作に悩まされていたそうです。そんなハーベーさんが愛飲していたのはコーヒーで、発作の時には痛みを感じなくなるまで飲み続けたそうです。

●ウイリアム・ハーベーは「コーヒーは痛風壊血病、浮腫病に効く」と書き残した(詳しくは → こちら

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 この写真はコーヒーの功徳を書いた宣伝ビラですが、ロンドン初のコーヒーハウスが配っていたとのことで、今でも大英博物館に大事に保存されています。書いたのは無類の珈琲狂で、自らの通風をコーヒーで癒したと伝わっているほどの人物ですから、コーヒーの効き目については当代随一だったことは確かなことでしょう。赤字のgoutは痛風で、scurvyはビタミンC不足の壊血病、dropsyは栄養失調が原因の浮腫で死の病として恐れられていました。

 さて、それから350年が過ぎました。痛風の医学も大分進歩しましたし、予防薬も色々開発されました。コーヒーの疫学でも、尿酸値が下がるとか、発作の頻度が減るとのデータが増えつつあります。

●抗尿酸血症と関連する遺伝子として、GCKR(グルコース代謝)、ABCG2(尿酸輸送)、MLXIPL(グルコース代謝と脂肪合成)、およびCYP1A2(カフェイン代謝)が知られている。

そこで今回、40-69歳の被験者130,966人について、「コーヒーを飲む量と痛風リスクと遺伝子変異」の関係を調べてみました。わかったことは次の通りです(詳しくは → こちら)。

  1. 毎日コーヒーを飲む人の痛風リスクは低かった:HR=0.75(p=0.0000001)。
  2. CYP1A2とMLXIPLの変異が尿酸値を高めていた。
  3. GCKRとABCG2の変異が痛風の発作回数を高めていた。

 これらを総合すると、次のようにまとまります。

痛風と関連する遺伝子に変異があるヒトは、コーヒーを飲む習慣をもたない傾向があり、飲む量が少ないと痛風のリスクが高まる。

 カフェインに例を取ると、CYP1A2 に変異がある人は、カフェインの代謝が遅いために、カフェインの効き目が長く続き、そのことがコーヒーを好きになれない理由となり、毎日ほとんどコーヒーを飲まない生活を送るため、痛風のリスクを下げるというコーヒーの恩恵にあやかれないことになるのです。

 ややこしいことはさて置き、世の中に出回っているコーヒーをもっと美味しくするとか、美味しく飲める淹れ方を工夫することで、コーヒー好きの数をもっと増やせれば、高尿酸血症で悩む人の数を減らすことができるというものです。

(第384話 完)

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第383話 患者の珈琲学(その47)カウェオールと乳癌肺転移

シリーズ『くすりになったコーヒー』


 前回も乳癌の肺転移について書きました。コーヒーのニコチン酸が関与して「コラーゲン生合成を阻害することで転移を抑制できるかも」というお話でした。論文はNature誌の4月号でしたが、今回は2月号の論文です。これほど短い期間に2つの似た論文が出るなんて珍しいことです。今回のコーヒー関与成分は、コーヒーオイルに溶けているジテルペン類の1つカウェオールです。

 乳癌は肺に転移し易い…前回とは別のメカニズムが見つかりました(詳しくは → こちら)。

●乳房を離れて血中を流れる乳癌細胞は、好中球と接着してクラスターを作る(図1の四角内を参照)。

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 好中球はリンパ球の仲間で、盛んに遊走(アメーバ運動)しながら、体内に侵入する微生物を捕食して、感染症を予防しています。好中球を選択的に中性色素を使って染色すると、血液中の白血球の半数以上を占めていることが解ります。

 図の左端をご覧ください。好中球が乳癌組織に留まっている癌細胞に接着したり捕食することはないようですが、一旦癌組織から離脱して血液に入った乳癌細胞(CTC)は、接着因子VCAM1を介して好中球にくっついてクラスターを作ります。このクラスターはIL-6などの炎症性物質を撒き散らしながら血流に乗って肺を目指すのです。

エスプレッソに多く含まれているジテルペンのカウェオールがVCAM1の発現を抑制する(詳しくは → こちら)。

 ということで、コーヒーを飲むと図1の四角の中に描いてあるVCAM1が働かなくなる、つまりクラスターができないというのです。もしできなければ、炎症性物質の放出も起こらず、何処であれ他臓器への乳癌転移は起こらないと思われます。

●首尾よくクラスターを作った乳癌細胞はやがて肺に到達する。

転移を邪魔するものがなければ、乳癌細胞は肺に新たな居場所を獲得して転移巣を作り始めます。しかし、もし患者がコーヒーを飲んでいれば、乳癌細胞の肺侵入を妨害できるかも知れません。その可能性を示す別の論文がありました。その論文によると、コーヒーの何らかの成分が働いて、乳癌細胞の肺への侵入を助長するE-セレクチンという接着因子が機能しなくなるというのです(詳しくは → こちら)。

 さて、如何でしたか?以上は筆者の想像ですが、Nature誌の論文の中に、コーヒーの癌転移への介入が垣間見られることは想定外の喜びでした。これまでとは違うコーヒーへの期待感が膨らむというものです。
(第383話 完)

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第382話 患者の珈琲学(その46)乳癌転移とコーヒーの関係

シリーズ『くすりになったコーヒー』

 乳癌が怖いのは転移があるからで、転移さえなければもっと安心して治療できるのだそうです。転移を防ぐための最大の課題は「乳癌の転移が何故起こるのか」を知ることですが、これが本当に難しい。それでも少しずつ進歩があるのは確かです。最近の論文を紹介しましょう。

●乳癌の肺転移にはコラーゲンが関係している(詳しくは → こちら )。

 図1をご覧ください。

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 グルコースの分解で生じるピルビン酸は、肺細胞の中鎖脂肪酸ゲートMCT2を通って細胞内に入ります。次にピルビン酸はα-ケトグルタル酸(α-KG)に変わります。ここでα-KGの特性に注目しましょう。その特性とは、プロコラーゲン分子の構成アミノ酸の1つであるプロリン分子に水酸基(-OH)を導入することです。この化学変化はプロリン-4-水酸化酵素(P4HA)の働きで加速(触媒)されるのですが、α-KGはその酵素を活性化する特性をもっています。結果としてプロコラーゲンは水酸化されて、プロリンがヒドロキシプロリン(OH-プロリン)に変化して、OH-プロコラーゲンができるのです。

 この増量したOH-プロコラーゲンが細胞から排出されると、細胞と細胞の隙間に溜まり、そこに種々の物質が集まって、ニッチと呼ばれる不安定な塊を作ります。実はこのニッチこそが、血液中を流れている乳癌細胞の新たな住処になるのです。

●血中の乳癌細胞は新たな住処を求めているが、ニッチがその場を提供する。

ニッチとは、隙間、居場所、最適な場所等々の意味で使われますが、医学用語としては組織のなかにできる「微小環境」という意味でよく使われるようになりました。そしてコラーゲンが集合した肺組織のニッチが、血液中を流れている乳癌細胞にとって実に住み心地の良い転移先になるのです。

 では次に、肺にニッチが出来る過程で、コーヒーが関与する箇所があるでしょうか?魅力的な論文が見つかりました。

●ハムスターの実験で、ニコチン酸アミドを投与すると肺組織のコラーゲン蓄積が抑制される(詳しくは → こちら )。

 そのとき同時にP4HAの活性が下がっていることも確認されました。つまり図1の中鎖脂肪酸ゲートMCT2が、ニコチン酸アミド由来のニコチン酸によって閉鎖されて、ピルビン酸が入れなくなっているのです。もう1つ別のメカニズムとして、ニコチン酸アミドが補酵素NADに変換されていることが観察されました。NADの増加は、エネルギー物質ATPの増加をもたらすはずですが、これも実験で確認されました。

●もしかすると、NADが増えてミトコンドリアが活性化されることが、乳癌転移の抑制に関わっているのかも知れません。

 以前に紹介したことですが、コーヒーが乳癌の転移リスクを下げるとの疫学データがあります。そうでないとのデータもあって状況は複雑ですが、ある種の乳癌の転移の抑制にコーヒーのニコチン酸が関与している可能性があります。ということで乳癌患者のコーヒーの飲み方、どんなコーヒーをどのくらい飲んだらよいかについて、さらなる研究の進展を待ちたいと思います。

(第382話 完)

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第381話 解説 コーヒーの影響を受けるリン脂質

シリーズ『くすりになったコーヒー』

ちょっと専門的ですが、もしかするととても重要な話です(詳しくは → こちら )。

●リン脂質とは、グリセリン(緑)に長鎖脂肪酸(灰)とリン酸(赤)とコリン(青)が結合して、石鹸みたいな性質がある。

 数多くの種類がありますが、ここには代表的な2つを絵で示します。図1をご覧ください。

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 図1上段のホスファチジルコリン(PC)は、いわばシャボン玉を作っている材料のようなもので、シャボン玉が細胞だとしたら、実際の細胞膜はPCでできているということです。細胞の中にも小さなシャボン玉がいくつもあって、その膜もまたPCでできています。

●脂肪分解酵素でPCから脂肪酸2が外れるとリゾホスファチジルコリン(LPC)になる(図1下段)。

 LPCが膜を作ることはありませんが、その代りに細胞質の中で色々な役割を果たしているようです。細胞が生きて行くために無くてはならない存在ですが、役割の詳細はまだまだ解らない部分が多く残っています。

●コーヒーを飲むとLPCの血中濃度が下がる。

 これが冒頭に挙げた論文の実験結果です。コーヒー飲用習慣が2型糖尿病を予防することはほぼ間違いありません。コーヒーが脂肪の燃焼を促して、ダイエットに良いとのデータもあります。しかし、脂肪が燃焼して体重が減っても、血中の脂質が下がるというデータはほとんどありませんでした。今回の論文を詳しく読んでみました。

【実験方法】47人の習慣的なコーヒー愛好家が、最初の1ヵ月間(第1期)はコーヒーを控え、2ヵ月目(第2期)に1日4杯を、3ヵ月目(第3期)には1日8杯を飲みました。各期の最終日に採血して、計853種類の脂質を定量分析しました。

【実験結果】853種類のうち統計的に有意な濃度変化が見られたのは僅か3つで、3つとも[第3期<第2期<第1期]の順に濃度低下を示していました(表1を参照)。

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 表1には3つのLPCの構造も書いておきます。コリン、リン酸、グリセリンは共通ですが、脂肪酸の不飽和数が異なっています。LPCカッコ内の数字は、最初が脂肪酸の炭素数、コロンの後は不飽和の数です。

●LPC(20:4)は免疫アレルギー反応を制御するアラキドン酸の原料になっている。

 コーヒーを飲むことでこのLPCが減少することが、病気の予防とどう関係しているのか、今は何とも言えない状態ですが、大いに期待がもてるのです。全日本コーヒー協会のホームページに、岡山大の杉本先生が「コーヒーはアレルギーを予防する・・・」と書いていますが、論文発表は見当たりませんし、真偽のほどは不明です(詳しくは → こちら )。

 今後の世界のコーヒー研究を待ちたい思いでいっぱいです。
(第381話 完)


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