栄養成分ブレンドコーヒーの手引き(^^)

第378話 患者の珈琲学(その44)膵臓癌の肝転移

シリーズ『くすりになったコーヒー』

 膵臓癌は治りにくく死亡率が高い病気です。癌が膵臓内に留まっていればまだしもよいですが、肝臓に転移すると大変です。肝臓癌の生存率は他の臓器癌とは比べ物にならないほど低いからです(詳しくは → こちら)。

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 図1をご覧ください。膵臓癌の診断が下ってから、5年生存率を比べてみると、男も女も肝臓癌の次に悪いのです。ですからもし膵臓癌が肝臓に転移すると、生存率が大幅に短縮されてしまいます。
膵臓癌が肝臓に転移するメカニズムが解ってきた(詳しくは → こちら )。
 これまで、膵臓癌が肝臓に転移し易いことは知られていましたが、その詳しいメカニズムは不明でした。つい最近になってNature誌に載った論文によりますと、転移には「癌が仕組んだ巧妙な仕掛け」があるのです。

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 図2をご覧ください。先ず膵臓癌が作る免疫物質IL-6(左上)が肝臓に入ります。するとそこで転移前ニッチという不安定な微小組織が出来上がります。ニッチの中にはIL-6受容体があって、膵臓からくる更なる刺激を受けるのです。すると次にSTAT3という発癌因子が作られて、それがもとになって、ニッチ周辺に膵臓癌細胞を受け入れる準備が整ってきます。つまり、膵臓癌はまず転移先に居場所を確保して、それから引っ越しするという順番なのです。
 ところでこの論文には書いてありませんが、筆者はコーヒーオイルに含まれているジテルペンに興味があります。何故なら、その1つカウェオール(図2の構造式)が膵臓癌の肝転移に介入する可能性があるからです。
●コーヒーオイルに含まれているカウェオールは、炎症を起こした肝臓でIL-6産生とSTAT3の活性を抑制する(詳しくは → こちら )。
 この論文の内容を図1に書き込んでみました。カウェオールが肝細胞でSTAT3合成を抑制するということは、膵臓癌が肝臓に定着しにくいことを意味しています。少なくともその可能性があるということです。さらに加えて、
●カウェオールを含まないドリップコーヒーは、ウイルス性とアルコール性肝炎の癌化を抑制する(詳しくは → こちら)。
 コーヒーと肝臓癌の論文は他にも多数あって、どれもが「コーヒーは肝臓癌を予防する」と結論づけています。コーヒーが膵臓癌の肝転移を抑制するとの論文はありませんが、もし運悪く膵臓癌と診断されたなら、毎日コーヒーを飲むことが増悪を予防する1つの有力な方法と思えるのです。
(第378話 完)

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第377話 患者の珈琲学(その43)糖尿病患者の白内障

シリーズ『くすりになったコーヒー』


 食生活の乱れ、運動不足、積もり積もって2型糖尿病になりました。でもそれで終わりではありません。糖分が多めの血液は身体のあちこちに不具合を起こします。太い血管と細い血管、何処も彼処も合併症を起こす危険地帯になっています。しかしもっと他にもあるのです。
●血液が流れていない目のレンズでも、糖尿病白内障は厄介である(詳しくは → こちら )。
 白内障は目のレンズに濁りが生じて視野が暗くなり、治療しないと失明する病気です。レンズの濁りは誰でも年を取れば大なり小なり起こりますが、糖尿病の人に起こると進行が早く、失明のリスクが高まります。予防できるものなら予防したい・・・糖尿病患者なら皆がそう思っているでしょう。
 糖尿病白内障の研究は予防が第一で、それには糖尿病そのものの治療が大切です。白内障をどうこうするというよりは、糖尿病を治療したり、例え治らなくても進行を遅らせることに効果があります。ですから糖尿病白内障の研究はほとんどないと言ってよいくらいなのです。そんな状況の中、2016年に「コーヒーが白内障を予防する」との論文が発表されました。
●コーヒーを飲んでいる人は白内障が原因の視覚障害になりにくい(詳しくは → こちら )。

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 図1のカフェイン源はそのほとんどがコーヒーなので、1日に300㎎ということは、コーヒーほぼ3杯に相当しています。実はこの杯数は、疫学研究で心臓病死リスクが最低値を示す数値で、それと同じ杯数でレンズの濁りを10%以下に抑えられるということは、予防法として高く評価できるはずです。
 このデータを受けて、慶応大薬学部の田村教授がラットを使って実験しました(詳しくは → こちら )。教授がまず気づいたのは、「高脂肪食でメタボ化したラットの白内障予防には、生豆より焙煎豆がよい」ことでした。次に気づいたのは、白内障のレンズには抗酸化性のグルタチオンやビタミンC(VC)が減っていることでした。そこで最初に取った策は、焙煎すると増える抗酸化物質を探すことで、答えは表1のようになりました。候補に挙げていた4つの成分のうち、カフェインとピロカテコールがグルタチオンやVCの減少を抑えたのです。

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 実験の一部を図2に示します。縦軸はレンズ内のVCの濃度で、通常食で飼育したラットでは、水、コーヒー、カフェイン、ピロカテコール、そのどれを与えても変化はありませんでした。一方、高脂肪食でメタボ化したラットでは、水だけ飲ませていたラットのみVC濃度の低下が明確でしたが、コーヒー、カフェイン、ピロカテコールのどれもが同じように、ほぼ正常値に近い値でレンズの透明度を護っていました。

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 以上の結果を概念図で示します(図3)。この目がラットの目というよりもヒトの目に似ている訳は、図1に示したヒトの疫学研究で「コーヒーを飲む習慣が視力の低下を防ぐ」というデータがあったからです。

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 田村教授の論文には、VCの他にグルタチオンでも同じ結果が得られたと書かれています。VCと同じく、グルタチオンの抗酸化性がヒトのレンズの透明度を保つ要素の1つになっているのです。
●糖尿病になったら毎日深煎りコーヒーを飲んで目を護ろう。
(第377話 完)

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第376話 患者の珈琲学(その42)肝臓癌患者の肝移植

シリーズ『くすりになったコーヒー』

第376話 患者の珈琲学(その42)肝臓癌患者の肝移植

 これまでにも、「コーヒーを飲んでいる人が手術で入院すると、普通より早めに回復する」との論文がありました。回復が早い理由として、全身麻酔の影響で止まっている腸の蠕動運動が回復しやすいからで、1日だけ早く普通食が食べられるようになったとか、おならが半日早く出たとかいうデータが載っていました。では入院日数が減ったかというとそうでもないのです。要するに大した効き目ではなかったのです。ところが今回の論文は、
●コーヒーを飲んでいる肝臓癌患者は、最後の手段である肝移植後の死亡率が格段に低い(詳しくは → こちら)。
 手術の傷が早く治るとかの次元を超えて、癌が再発したり無駄に命を失うことが減るというのです。正に想定外の効き目です。研究したのはドイツと米国の錚々たる9病院の共同チームで、調査症例数は90、全例が肝臓癌、そのうち16症例(17.8%)が約1年後に癌を再発しましたが、最長12年の死亡例を多変量解析したところ、術前・術後のコーヒー摂取が死亡率と関係していることがわかったのです。数値を見ると、術後1日3杯以上のコーヒー摂取で、死亡リスクのハザード比HRが、コーヒーを飲まない群の1.00に比べて0.29の低値を示していたのです。
 百聞は一見に如かずですから、論文に掲載された図をご覧ください。

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 2枚の図は、左が手術前のコーヒー、右は手術後のコーヒーの1日杯数と生存率の関係です。コーヒーを飲まない人のグラフは赤色で、1日3杯以上は黄色です。右図によれば、術後に毎日飲むコーヒーが、生存率を飛躍的に高めていることが見て取れます。コーヒーが手術の予後に及ぼす効果をこれほど明確な有意差で観察した論文は初めてで、にわかには信じられないほどのデータです。
 さて、日本の肝臓移植の実績を見てみますと、コーヒーの調査こそありませんが、下表に示す術後生存率が発表されています。ドイツのデータよりやや優れた数値ですが、まだまだ改善の余地がありそうです。ですから、術後には積極的にコーヒーを飲むなど生活習慣を変えることも大いに有望な改善策ではないでしょうか。

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 今回のドイツ発の論文は、薬では不可能な手術による死亡リスクの改善が、ごくごく簡単な日常生活の工夫で実現できるという、夢のような話を真面目に考える切っ掛けになると考えられます。
●コーヒーは本当に偉大な唯一無二の飲みものである。
 コーヒーはたった1つの植物の種に過ぎないのに、そこには何種類もの薬用植物の処方箋が詰まっていること、確かな事実として受け入れるときがやってきました。
(第376話 完)

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第375話 患者の珈琲学(その41)ニコチン酸欠乏症(Ⅱ)

シリーズ『くすりになったコーヒー』


(前回のつづき)
 さてさて、コーヒーのニコチン酸(VB3)とメチルピラジンNADを増やすと言っても、実際に1杯のコーヒーを飲んでどれ程の効果があるのでしょうか?客観的に効き目を見積もるのは難しいので、先ずはコーヒーを飲んだ後で血中ニコチン酸に起こる変化を見ることにします。実験プロトコル(図1)をご覧ください(詳しくは → こちら)。

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 コーヒーを飲む前2日間は、ニコチン酸(NA)もニコチン酸アミド(NAM)も含まない食事で過ごしました。3日目の朝に飲むコーヒーは、フルシティー程度の豆のようです。これを30グラム使って湯で淹れて、500ミリリットルにして飲んだそうです。その後は図1の矢印ごとに採尿し、2日半を過ごしたということです。

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飲んだコーヒーには4.28ミリグラムのニコチン酸と0.071ミリグラムのニコチン酸アミドが入っていました。この量はVB3として1日必要量のほぼ3分の1に相当しています。これら2つと代謝物の測定にはHPLC/MS法を採用し、図2のような全部で4つの化合物を測定しました。
図3はニコチン酸の排泄動態で、飲んだ後に速やかに吸収されて、1時間で排泄ピークとなり、その後も速やかに排泄されて、半日でほぼ終わりました。ニコチン酸アミドもよく似た変化を示していました。

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 これに対して、2つの代謝物の排泄量は10倍以上で、計算によると4つの化合物の合計で90%が吸収されて尿中に排泄されたことになります。つまり食べたニコチン酸の利用率は非常に良好ということです。
 では、コーヒーの香りに含まれる各種のメチルピラジンはどうでしょうか?これらの香りが体内に入ると、ピラジン酸に変わるのですが、一体どれだけの量を飲んでいるのか正確な計算はできません。1杯に1ミリグラムに満たない香り成分のうち10種類程度が寄与すると思われるからです(詳しくは → こちら )。
 未解明の部分は多々残ってはいますが、コーヒーを飲むとニコチン酸が体内に入り、NAD生合成のデ・ノボ経路の活性化に寄与することは明らかです。NADは全身の細胞でエネルギーを産生し、長寿遺伝子サーチュインを活性化し、いわば「元気の素」となって病気を予防し、三大死因病の死亡リスクを減らし、元気で長持ちのPPKを実現してくれると考えられるのです。
●やっぱりビタミンは凄い優れものなのだ。
(第375話 完)

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第374話 患者の珈琲学(その40)ニコチン酸欠乏症(I)

シリーズ『くすりになったコーヒー』

 焙煎したコーヒー豆にたった1つだけ入っているビタミンはニコチン酸(VB3の1つ;下図の左)。1杯あたりの含有量は、深煎りで最大4~5㎎なので、1日2~3杯で必要量を満たします。VB3が欠乏するとペラグラ(重症の皮膚疾患)が起こります。見た目よりずっと致死的となる理由は、気管支や消化管など体内の粘膜が破壊されて、息ができない、栄養が摂れない、といった状態になるからです。
●VB3欠乏症とその予備軍がどれ程いるか、実態は不明で調査も難しい。
 筆者がVB3欠乏症を心配する訳は、毎日食べるものでVB3を多く含むものが少ないからです。言い換えれば欠乏症の予備軍はかなり多い可能性があるのです。豚肉などにはニコチン酸アミド(同じくVB3の1つ;下図の右)が含まれていますが、毎日肉ばかりを食べる生活は良くないとの意見も多いのです。その意味では毎日飲むコーヒーにニコチン酸が入っているのは本当にありがたいことです。

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●コーヒーのニコチン酸が実際に役に立ったと思われる歴史上の出来事がある。
江戸幕府津軽藩に命じて、宗谷岬のロシア軍侵攻に備えました。しかし、厳冬期の食糧不足が原因で、浮腫病(壊血病と似ている)で死亡する兵士が後を絶ちませんでした。幕府は蘭学者の勧めに従って越冬地にコーヒーを支給したのです。その時の記録によれば、コーヒーが配られた冬に浮腫病で死んだ兵士は居なかったのです。
●先祖の苦労とコーヒーへの感謝の気持ちを込めて、弘前市は珈琲の街になった(詳しくは → こちら )。
記録に残された津軽藩兵の食事内容から、欠乏したであろう必須栄養素を予測したデータがあります(薬史学雑誌51(1):5-10;2016)。ほぼないに等しいくらいの欠乏はVA、次にVC、更にVB3と続いています。つまり津軽藩兵の浮腫病とはVA/C/B3の総合欠乏症だったようです。この中で、コーヒーで補給できるのはVB3だけですから、いくらコーヒーを飲んでもAとCは不足のまま・・・それでも浮腫病が防げた理由は一体どういう薬理学なのか、あるいは偶然の出来事だったのでしょうか?
●今年1月8日の朝日新聞にこんな記事が載っていました(原著論文は → こちら )。

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 新聞記事によれば、ミトコンドリアで働く重要な補酵素NAD(記事の☆)が老化を予防する新メカニズムが見つかったとのことです。新メカニズムとは、「NADの原料となるNMN(記事の□)が専用通路(記事の〇)を通って細胞の中に入る」というもので、専用通路のことを「NMNトランスポーターまたはNMNゲート」と呼ぶことにしたのです。
筆者がこの記事に注目したわけは、つい数か月前のNature誌にもNMNが載っていたからです。NMNとは、ニコチン酸アミド・モノヌクレオチドの略で、その分子の一部がVB3で出来ているのです(図1も参照)。Nature誌の論文は次のようなものでした。
NADは病気を予防して寿命を延ばすために必須の補酵素で、普通はリサイクル(図1赤色のサルベージ経路)されている(詳しくは → こちら)。

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このサルベージ経路にはニコチン酸アミドとNMNがあって、週に何回か肉や魚を食べていれば、普通はそれでよいのです。しかし、何かの理由でストレスが溜まると、リサイクルだけのNADでは必要なエネルギーを作れなくなって、VB3不足になってしまいます(詳しくは → こちら )。
●ストレス時のNAD不足を補うため、必須アミノ酸トリプトファンからの生合成経路(図1のデ・ノボ経路)が動き出す。
このデ・ノボ経路の中間体ACMSは、非ストレス時には必要ないので、脱炭酸酵素が働いて分解消滅しています。しかし一旦ストレスが掛かりますと、NAD生合成に向かってデ・ノボ経路が動き出し、結果として、デ・ノボとサルベージの両経路を合わせて十分量のNADが作られるというわけです。
さらにNature誌によると、ストレス時のNAD産生効率を一段と高めるために、ACMS脱炭酸酵素阻害薬が試されました。昔から知られていた阻害薬ピラジナミド(結核治療薬として使われている)では作用が弱いとの考えで、新薬候補物質を作って試したのです。しかしコーヒーを研究している筆者は、ピラジナミドに興味をそそられました。その理由は、
●ピラジナミドがACMS脱炭酸酵素を阻害するその活性本体は、実は代謝産物のピラジン酸で、コーヒーアロマからできるピラジン酸と同じである(図2を参照)。

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結核治療薬のピラジナミドとコーヒーアロマのメチルピラジン(図2では省略)は、どちらも体内で代謝されて、共通の代謝産物ピラジン酸に変わります。そしてこのピラジン酸が、図1に書き込んだように、ACMS脱炭酸酵素を阻害して、NAD生合成を盛んにしてくれるのです。そしてNature誌論文の最後の段落には、「デ・ノボ経路を強力に進める新薬候補は、病気を予防し健康長寿への道につながる」と書いてありました。
●コーヒーは、NADの原料としてニコチン酸を補給するだけでなく、ACMS脱炭酸酵素を阻害して、NADデ・ノボ経路を活性化する(図1を参照)。
 ではもう1つ、極めて示唆に富んだデータを紹介します。高脂血症薬として前世紀にヨーロッパで開発されたアシピモックスは、体内で5-メチルピラジンカルボン酸(5-MPCA)になってから作用します(図2を参照)。この活性本体5-MPCAの構造は、コーヒーアロマ(2,5-ジメチルピラジン)からできる化合物と同じです。2015年、オランダ・ドイツ・フィンランドの研究グループが、アシピモックス1回250ミリグラムを服用した患者の体内で、NAD生合成が高まっていることを発見しました(詳しくは → こちら )。
このように、ACMS脱炭酸酵素を阻害してNADを増やす化合物に共通する化学構造がコーヒーアロマに潜んでいるなどとは、だれも考えなかったことです。もしかするとコーヒーのニコチン酸とアロマの成分に、病気と老化を予防するパワーが潜んでいるかも知れません。
このお話は次回に続きます。
(第374話 完)

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第373話 番外編 コーヒー豆症候を知ってますか?

シリーズ『くすりになったコーヒー』


 今回はコーヒーそのもののお話ではなく、コーヒー豆に似ているからと命名された病気の症状のお話です。では始めます。

 その名はCoffee-Bean Sign (CBS:コーヒー豆症候)と呼ばれていますが、何じゃそれはと問う前に、一目写真を見ればすぐに了解。ではその写真をご覧ください。

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「えっ!お腹の中にコーヒー豆?」。しかも見たことない大きさ。センターカットの向きはマチマチだが、実物との見分けがつかないほどよく似ています。何でこんなものがあるんでしょうか?・・・と聞く前に、そのセンターカットの角度によって、すぐに手術が必要かどうか、外科医にとって重要な判断につながるのだそうです(詳しくは → こちら )。

●分度器が示す角度がaからcと大きくなると、AからCへと重症度も増して、水平に近づくとオペの準備が始まるのだ。

 さて、CBSは大腸のS字結腸と呼ばれる部分で起こります。何故かと言いますと、この部分の腸管が腹膜に固定されていないために、何かのはずみにクルっと回転して、腸管軸捻転を起こし易くなっているとのことです。図2を見るとよくわかります(詳しくは → こちら :サイト検索に「腸管軸捻転」と入れてクリック)。

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 さてさて、東大病院の医師グループが分度器診断法を編み出した経過はと言いますと、訳があるのです。病因で腸管軸捻転はX線写真で大略診断できても、壊死の有無を見分けて、手術の必要性を正確に判断することは難しいのです。そこで東大病院では、過去の66症例のカルテを精査した結果、図1のようなX線画像に見られたCBSの軸角度とその後の臨床経過の間に「重症度に応じた角度」があることに気づいたのです。

X線画像と分度器で巨大コーヒー豆のセンターカットの角度を知れば、治療法選択の意思決定が容易になる。

 それにしましても、こんなに大きなコーヒー豆を見たのは初めてです。
(第373話 完)

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第372話 患者の珈琲学(その39)反応性低血糖症

シリーズ『くすりになったコーヒー』


 食後血糖値の上昇は誰にでもありますが、一旦上昇した血糖値が直ぐに下がり始めて、4時間ほどの間に50㎎/dL前後(正常値は100前後)まで急降下してしまったら、反応性低血糖の疑いが強まります。甘いものを食べた時にも同じことが起こると、甘いものを食べるのが怖くなってしまいます。実際に、そんな経験をした人も居るようですし、筆者の知り合いにも結構います。論文が少ないので、読売新聞のネット投稿記事を紹介します(詳しくは → こちら )。

 コーヒーに砂糖を入れて飲むと数時間後に低血糖が起こり嫌な気分になることがあります。これも反応性低血糖です。そのため、「自分にはコーヒーが合わない」と信じ込んで、二度とコーヒーを飲まなくなってしまいます。でもそれは間違いで、悪いのはコーヒーではなくて砂糖なのです。砂糖や炭水化物を減らした食習慣に慣れることで反応性低血糖を防ぐことはさほど難しいことではありません。そのためか、医者にかからずに済ませている人も多いようです。図に描いて説明しましょう。

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 医学的に「反応性低血糖」は降圧薬の利き過ぎによる低血糖とは区別して名づけられました。何が反応性かと言いますと、食後または砂糖入りコーヒーを飲んだ後に上昇し始める血糖値に、膵ベータ細胞が異常に早く反応してインスリンの分泌が始まってしまうのです。大きな上向き矢印は異常な高値を示しています。そのため上がりかけた血糖値が、今度は急速に低下し始めて、異常な低値を示すようになるのです。こんな風に血糖値が激しく上下することを血糖値スパイクとも呼んでいて、治療薬があるわけではなく、食生活習慣を自己流に管理する以外に良い方法はありません。

 血糖値の異常な低値は体に種々の変化を起こします。空腹感、脱力感、震え、眠気、冷や汗、立ちくらみ、不安感などに襲われるのです。すると今度は恒常性維持のメカニズムが働いて、副腎髄質からアドレナリンが分泌されて、それが血糖値を押し上げることで、正常値を取り戻すという訳です。

 仮に内科医を訪問して診察を受けたとしても、上記以外の検査値には一切の異常が認められません。神経、ホルモン、代謝機能、どれを調べても異常なしの原因不明。食事との因果関係を調べても、食事をした、ご飯を多く食べた、砂糖を入れてコーヒーを飲んだ、など以外に特別の原因らしきものは見つかりません。ではどのように対処したらよいでしょうか?

●米国Mayo Clinic(米国で最も人気のある総合病院)のホームページに、患者向け解説文(英文)が載っています(詳しくは → こちら )。

 ここに書いてある食事に関する要点は次の通りです。
1.炭水化物を摂り過ぎない。
2.甘いものを摂ない
3.1食の量を減らして回数を増やす。
4.3時間おきぐらいにスナック(ごくごく軽食)を食べる。
5.繊維質を多めに摂る。
6.コーヒーはブラックで飲む。
 如何でしょうか?対応を間違えると糖尿病にもつながりかねない反応性低血糖ですから、もし体験したら適切な食生活を心がけるのが一番です。
(第372話 完)

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